あつい夏、はたらきもののアリたちは、冬のたべものをたくわえるために汗をながしてはたらいていました。
いっぽうのんきなキリギリスは、すずしげな顔でバイオリンをひいています。
「なにをそんなにいそがしそうにしてるんだい? ながい人生、たのしくいこうよ」
アリたちは、無言でたべものをはこびつづけました。
やがて冬がきて、あたりは雪につつまれました。
アリがのんびりごはんをたべていると、キリギリスがやってきました。
夏のあいだあんなにようきだったのがうそのように、やつれたかおをしています。
「たべものをわけてくれないか。しばらくなにもたべてないんだ」
アリはなやみました。
わるいのはあそんでばかりいたキリギリスで、たべものをわけあたえる義理はないはずです。
しかしここでキリギリスをみごろしにしては、せけんからつめたいやつだというレッテルをはられてしまいます。
アリはせけんていをきにして、たべものをわけてあげました。
「ありがとう! きみは世界一やさしいアリだ!」
たしかに、キリギリスにとってはこころやさしいアリにみえたことでしょう。
しかしアリのはらのうちには、たべものとはべつのなにかがたくわえられているのでした。
![イソップえほん (10) アリとキリギリス イソップえほん (10) アリとキリギリス](https://m.media-amazon.com/images/I/51I4N3FA2cL._SL160_.jpg)
- 作者:蜂飼 耳
- 発売日: 2017/03/08
- メディア: 単行本